足腰が弱ったら!いろいろある段差解消の便利ツール
2020.03.11 Category:段差解消の定番はスロープ!設置方法とコストを解説
屋外の高い段差を解消するためにはスロープの設置が一般的です。スロープにはコンクリートを固めてつくる固定式のタイプと持ち運びが可能な簡易式のタイプがあります。固定式のものでは大がかりな工事が必要となり、事前の調査と見積もりも取らなければならないため、完全な設置までにはある程度の日数がかかります。地面にしっかりと埋め込むため、いったん設置してしまえば劣化の心配がほとんどなく、半永久的に使用できるのが大きなメリットです。
簡易式スロープは駅やバスなどの公共交通機関などでも介助用として使われており、比較的コンパクトで軽量なため、外出先でも使えるという利点があります。ただし、コンパクトとはいってもやはりそれなりの重量があり、外出時に持ち運ぶには荷物としてかさばるという欠点をもっています。また、軽量な分だけ耐久性がやや低く、外国製の極端に重い車椅子で乗ると破損させてしまう恐れがあります。
簡易式スロープにはレールタイプと一枚板タイプがあり、用途やユーザーの状況に合わせて使い分ける必要があります。レールタイプはレールの部分を分割して持ち運べるため携帯に便利で、あまり力のない女性でも無理なく設置できるというメリットがあります。
反面、デメリットとしては、設置時にはその都度レールを組み立てなければならないためやや煩雑となり、操作を誤ると車椅子が脱輪してしまう危険性もあります。一枚板スロープは設置時の組み立ての手間が省ける利点がある一方で、分割できないため持ち運びがやや面倒という難点があります。スロープをどのようなシチュエーションで使いたいのかを具体的にイメージしたうえで、長く安全に使えるものを選びましょう。
スロープが使えない人向きの段差解消アイテム
ケガや障がいの進行具合によっては、スロープを使うことによって逆に症状が悪化するため、使用が不適当と判断されるケースがあります。
より具体的には、慢性関節リウマチで特に関節の変形が強く骨同士が強固に結びついてしまっている場合や、歩行器などを使用している場合はスロープがあることによってかえって脚に過度な負担をかけてしまうため、玄関台などの代替手段を検討する必要があります。また、実際にスロープの使用でケガをしてしまった場合も、継続使用が不適当と判断されます。
スロープ以外の段差解消アイテムとしては、昇降機やリフトなどがあります。昇降機は少し長い玄関の階段に取りつけるのが一般的で、リモコン操作で簡単に乗降が行えるのが大きな魅力です。昇降機には屋内用と屋外用があり、外見は似ているようでも内部の仕様や耐久性に違いがあります。
一般に屋内用のほうが水気に弱いという特徴があり、雨に濡れることを考慮されていないことがわかります。まれに屋内用昇降機を屋外用として取り付けている業者がいます。これは違法ではないものの、屋外用と屋内用ではそもそも耐久性に差があるため、設置後に思わぬトラブルが発生することが充分に予想されます。特に昇降機本体が雨ざらしになるような環境では本体内部に水気がしみこみやすく、最悪の場合ショートによる火災の原因になりかねません。また、屋外用を屋内用として設置する場合でも、過度な馬力によって階段が破損してしまう可能性が考えられますので、用途に沿わない使用は絶対にやめましょう。
リフトやスロープだけじゃない!室内の簡単段差解消法
家の中の階段や屋外の高い段差はリフトやスロープでなくすことができますが、室内の小さな段差に対してはもっと簡便で時間のかからないアプローチがあります。気になる段差にクッションをかませるだけでもバリア解消アイテムとして充分に機能し、車椅子でもスムーズに屋内を移動できるようになります。
ただし、歩行器や杖、補装具などを使用して歩行している場合はクッションがかえってつまずきの原因になりかねないため、本人の身体機能の状態に応じて最適なアイテムを選ぶ必要があります。小型のクッションなどは福祉用具としても購入できますが、ホームセンターでも市販品として購入できるため、「日常でちょっと困ったな」と感じたらまずはひと通りの道具をそろえてみるのもひとつのアプローチではあります。選択肢が多いほうが試行錯誤の幅が広がり、ライフスタイルに合ったものが見つかりやすくなるかもしれません。
ここまでは段差をなくす方向のアプローチについて見てきましたが、最近ではあえて家の中にバリアを残す発想が注目されています。通称「バリア・アリー」とよばれるアイディアで、屋内を完全なバリアフリーにしないことによって現時点で保たれている残存機能をより長く維持する、というのがその基本コンセプトです。もちろん、絶対に上り下りできない階段をそのまま放置するわけではなく、バリアのレベルを少し頑張れば負担なく乗り越えられる程度に調整しておき、暮らしの中で自然な運動を促すのです。
ただし、「バリア・アリー」を個人の判断で行うのは危険です。必ず医師や理学療法士などの専門家のアドバイスのもと、身体に負担をかけないかたちで行いましょう。